2016年2月8日月曜日

「まちづくりは、醤油づくりに似ている」


どうやればまちづくりは上手くいくのか。


この質問に答えられる人はたぶんいない。こうやれば上手くいきそうだ、というところまでは言えるけど、生もののであるまちづくりに正解はないと思う。


けど、この方の発言には、「うーん、なるほど」と思わず言ってしまうほどに、人間くさくも説得力を感じた。


「まちづくりはですね、ちょうど醤油づくりに似ていると思うんですよ。」



いつも物腰が低く、とても謙虚なこの人は、特定非営利活動法人NPOサポートちがさきの常務理事を務められている久保田 邦邇(くぼた くにちか)さん。私も理事を務める同法人の大先輩だ。


現役時代、久保田氏は某大手の醤油メーカーで営業職として世界中のマーケットを歩き回った。国内の同業他社と凌ぎを削りながら、世界をまたにかけて交渉という交渉を重ね、日本文化の代表ともいえる醤油を広めた人物の一人である。


引退後は、地元のためにとの想いで、地域の団体や行政の会議に出席、研究熱心でありながら人とのコミュニケーションを何よりも大切にする久保田氏の人柄に惹かれ、気がつけば地域でNPO活動をする人だけでなく、市内企業の様々な人からも慕われるようになった。


そんな彼が語った言葉、「まちづくりは醤油づくりに似ている」というのは、こういうことである。



「醤油はですね、大豆と小麦と塩、そして水と温度の要素でできているんです。そこに各社オリジナルの「菌」で仕上げていくんですね。これらを単に混ぜるだけではダメで、適切な温度に引き上げてから出ないとうまくできないですし、塩の加減で大豆のおいしさの引き出し方が変わってくる。これはまさにまちづくりにも通じていると最近思うんです。素晴らしい要素が揃っていても、機運ともいえるような温度が上がっていないと、おいしい醤油にはなれないんですね。適当な温度に引き上げて、行政や企業、市民の力を引き出す塩加減が必要なんだと思うんです。」


実におもしろい。理論的な用で情緒的で、すぐれて日本文化論のような奥ゆかしい視点。私には、この視点がすごく腑に落ちた。

最後に彼はこう一言付け加えた。


「でもね、まだ水の役割がよく分からないんですよ。なのでまだこれは研究中です。」


それがまちづくりのことを指しているのか、醤油づくりのことを指しているのかはよく分からなかったけど、久保田氏の研究はまだまだ続いていくのだということは分かった。





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